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2016年 11月
現在映画感想置き場と化しております。

「ソーセージ・パーティー」
R15CGアニメがまさかの日本上陸。外の世界には楽園が待っていると信じてお客に買われることを夢見ているスーパーの食材たち。しかし彼らに待っていたのは「食われる」という運命だった。悪趣味な映画が好きな人が大真面目にハイクオリティで作った悪趣味な映画。
「ズートピア」のように食材をメタファーとして使ってポリティカリーコレクトなメッセージを伝えることも出来ただろうし一瞬そういう方向性に行くのかなと 思わせる瞬間もあるのだが、「人間じゃなくて食材だから」を免罪符にしてエログロナンセンスギャグを堂々とやりたいだけじゃねーか!w
例えば序盤でスーパー内でカートが衝突して食材が床にばらまかれる場面は食材目線ではまるで「プライベート・ライアン」ばりの描写になってて(画面の彩度 まで落ちるw)、顔の皮がベロンと捲れたバナナ、地面にぶちまけられた臓物をかき集める缶詰、等といった地獄絵図が展開される。
逆に終盤では食材たちによる人間への逆襲があるんだけど、こっちは逆にポップな絵柄でドタバタが描かれるんだけど人間側から見たら結構エグい惨状になって るよな、とか。その他にもデフォルメされた擬人化キャラでマンガチックに描かれてるけどそんなんスクリーンに大写しにするなよ!ってのが沢山w
あとエロ系描写な。主人公のソーセージはもうチ○コだし、ヒロインのパンはマ○コだし(なんだよあの縦に割れた口をパクパクさせて喋るの!w)。特にラス トの大乱交シーンはアニメ映画史上に残る酷さ(褒め言葉)。玉袋伸ばして顔に被ってるしな(でも食材だから問題無し!)。あと無意味に尺も長いw
監督は「マダガスカル3」とか「きかんしゃトーマス」(!)とかで実績ある人達だし、音楽は「美女と野獣」「アラジン」の巨匠アラン・メンケンだし(よく 引き受けたな)、ボイスキャストもセス・ローゲン周りのアメリカンコメディオールスターズだしで、ちゃんとした人達が大真面目にふざけた映画。

「ザ・ギフト」
俳優ジョエル・エドガートンの長編監督デビュー作なのだが、これが小品ながら非常によく出来たサイコスリラーの傑作だった。ツイストの効いたストーリー、表も裏も演じられる俳優達(ジョエル・エドガートン含む)、派手さは無いが確実にドキリとさせる演出。全てが一級品。
仕事で越して来た夫婦の元に現れる夫のかつての同級生。存在すら忘れかけていたその同級生が夫婦に近付いてきて…と「不気味な隣人モノ」といった面持ちで 映画は始まっていくのだが、巧みに張られた伏線から物語は徐々に路線変更していき当初の想像とは違った展開にシフトしていくのが最高にスリリング。
この「ああ、そういう話になっていくのか!」という新鮮な驚きは脚本の妙もさる事ながら、ジェイソン・ベイトマンとジョエル・エドガートンという2人の役 者の力による所も大きい。外観から受けるパブリックイメージと、180度状況が変わった状態と両方共、説得力持って演じきる事が出来るもんなあ。
演出も的確で特に音の演出。いきなり大きな音で、というホラー的な演出によるサプライズは勿論なんだけど、そこに至るまでに聴こえるか聴こえないか位の何 かよく分からない生活ノイズみたいなのを散りばめて不安を煽っていくのが非常に巧み。曇りガラス越しの見えるか見えないかとかも上手い。
映画内におけるパラダイムシフトのせいで非常に後味悪い結末なんだけど同時にやってやったぜという爽快感もあるという不思議な余韻に包まれる映画。「ザ・ ギフト」というタイトルも映画を観た後だとかなりの重み(エグみ)を感じられる。人生を永遠に変えるほどの「贈り物」のやり取りの物語なんだよ。

「この世界の片隅で」
普通に暮らしていくことの素晴らしさ、かけがえの無さ、そして難しさを描いたある意味「究極の日常系アニメ」。戦時中でも連綿と続く人の営みを描くことで1944年の呉と2016年の自分達が地続きとなり、映画を超えた存在感となって心に染み渡っていく。大傑作。
アニメーションの快楽の一つに「日常風景を丁寧に描写する事」ってあると思うんだけど(派手なアクションと同等に、アニメで普通にご飯を食べている場面が 丁寧に描かれていたりしているのを見ると気持ち良いよね)、この映画にはそれが溢れていて、だからこそ自分達との地続き感も出てると思う。
だからといって地味で冗長になっていく訳ではなく、短いエピソードがサクサクと繋がっていって全体的にテンポは良いし、ここぞという所で目を見張るような 映像的演出をカマしてくるので(目が覚めたすずさんの周りの風景が絵画のようになっていく場面とかドキッとした)、間延び感はゼロ。
戦争映画としても「こんなに辛いことがあったんだよ。教えてあげよう」って説教モードでは全くないのがいい。んだけど「プライベート・ライアン」と同じで リアルに描けば描くほど戦争のヤダみが滲み出てしまうという。戦争が市井の人の日常を徐々に侵食していく様子が丁寧に炙り出されているもんなぁ。
映像と同様に音も大きな役割を担っているので音響の良い映画館で観るのが吉。砲撃や爆撃の音の臨場感たるや。ああ、あの時すずさん達には暮らしの中にこの ような音が入り込んできてたのね、ってのも日常侵食具合を示す大きなガイドになるのでは。風の音、波の音、雑踏の音という物も対比として。
あと主人公のすずさんを演じたのん(能年玲奈)さんが圧巻の名演。つか役と一体になり過ぎて名演と感づかせる隙すら与えないくらいの名演。観た人全員そう だろうけど、あの「声」は観た後もずっと頭の中に残り続ける声だと思う。最後の方の慟哭も心に突き刺さるのだが、普段喋りの心地良さヤバ過ぎる。
個人的にはこの映画は基本的に「日常コメディ」だと思っているので(笑える場面結構多いですよ)、そんなに気構えることなくサクッと観に行って、笑って 笑って最後に涙が、くらいの感じで「あー良い映画だったね」ってテンションでいいと思うんですよ。何か無理に語ろうとしなくても。

「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」
トム・クルーズ主演「アウトロー」の続編。ちゅても主人公が同じってだけで前作からの繋がりは無いので今作から観ても問題無し。つか映画のテイスト自体も変わってて、良い意味で緩くなった「丁度いい湯加減」のアクション娯楽作。
孤高の一匹狼のハードボイルドだった「アウトロー」に対し今作は「疑似家族のロードムービー」の様相を呈していて、ジャック・リーチャーに守る者が出来た 時にどう戦うかってのが描かれていて人間味がグッと増している。もっと言うと若干オチャメになってて、結構ユーモアも盛り込まれてる。
つってもやはりトム・クルーズの「俺TUEEE」映画。ミッション:インポッシブルがクソ度胸と最新ガジェットで戦うのに対し、こちらのシリーズでは智恵 と腕っぷしで危機を乗り越える。複数の敵に囲まれようが不安感は一切無し。逆にどうやって悪党たちをぶちのめしてくれるのかにワクワクする。
前作ほど謎解きに重きを置いてる作品じゃないんだけど、ラストでのある疑問の解決の提示のスマートさとか、尾行見破りを重ねる所や、携帯滑り込ませを重ね る所など、細かい演出が丁寧に施されているので、映画自体は往年のB級アクションテイストなんだけど頭の悪さは全く感じさせないという作り。
全体的にテンポも小気味良いのでストレス無く見れる。ただ最後の格闘だけがやたら長いなあと思ってたんだけど、その前に卑劣な手を使う悪党にトムが電話越 しに言った「お前の腕を折り、脚を折り、首を折ってやる」って台詞をちゃんと実行してるんだと気付いた時はトムさんカッケー!ってなったよ。


(画・文 P.I.L.)

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