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2016年 10月
現在映画感想置き場と化しております。

「ハドソン川の奇跡」
2009年に発生した世界的に有名な航空事故を名匠クリント・イーストウッド監督が映画化した感動の実話ドラマ。今簡単に「感動の実話ドラマ」って言ったけど、「感動の実話」を映画化すれば必ず「感動作」になるという訳ではないのだが、今作にはキッチリ泣かされました。
離陸から着水まで15分足らずの事故をどう映画化するのかと思いきや、事故の後から物語が始まり、国家運輸安全委員会による尋問会を軸にした一種の裁判劇 として進んでいき、事故があらゆる角度から回想されていき最終的に包括的な全体像が浮かび上がってくる時に真の英雄の正体が明らかになっていく。
この一種の裁判劇のおかげで、ハラハラドキドキの着地点を既に結果が分かってる事故の結果から別の所に移すことが出来るし、あっという間に終わった事故を 繰り返して描写する必要性も出来るし、で単に事件自体を間延びさせて膨らませることなく1本の映画に成り立たせる作劇が非常に上手い。
グッと来たのはこの生存劇が主人公の機長以外の様々な人達の「プロの仕事」によって成り立っているのが描写されている所。例えば降下を始めた旅客機内で CA達が「頭を下げて 姿勢を低くして」って綺麗に声を合わせて何回も復唱する場面で彼女らが何度もそういう訓練を受けていた事を窺わせたりとか
あと着水した後のNY警察の水上機動隊やフェリーの運転手達、ダイバー達、救急隊員達の仕事ぶり。個人的には事故現場に駆け付けた救急車がアメリカ赤十字 のロゴが印刷された毛布をこれでもかと大量に用意してるとかそういう所にグッときて思わず泣いちゃったんだよなー。彼等達も「英雄」なのだと。

「高慢と偏見とゾンビ」
恋愛小説の金字塔「高慢と偏見」とゾンビをマッシュアップした同名小説の映画化。18世紀末、ゾンビが跋扈するイギリスでベネット家の5姉妹はゾンビと戦いながら少林拳の稽古に励んでいた。というぶっ飛んだ設定からトンデモ映画かと思いきやかなりしっかり作られていた。
何より普通に恋愛モノとして話が面白い。原作未読だけど、これは元の「高慢と偏見」の面白さが損なわれること無くそのまま活かされてるんだろうなぁ。反発 しあい、惹かれあい、結ばれるという王道展開が驚くことにゾンビ要素に邪魔されず、逆に邪魔をすることもせずに綺麗に成り立っている。
衣装も小道具も特殊メイクもしっかりしてるし画に安っぽさが全然無い(ゾンビ物ながら荒廃した現代世界を用意しなくてもイギリス田舎町のロケーションをそ のまま活かせるという有利もあるんだろうけど)。役者陣も「シンデレラ」「マレフィセント」のガチな布陣を起用してるし、アクションもしっかり。
単に設定の面白さだけにならないよう、というか設定の面白さを最大限に生かせるように歴史恋愛物としてもゾンビアクション物としても手を抜かずにきっちり 作られている。そしてゾンビアクションにしては画が優雅すぎるし、歴史恋愛物としては頭が吹っ飛ぶ描写が多すぎるというミスマッチ感が楽しい。
姉妹たちが舞踏会の準備のおめかしでコルセットを締める行為の延長上みたいなテンションで太腿のホルダーにナイフを忍ばせるとか、恋バナでキャッキャとは しゃぎながらも行動はカンフーでバキバキにシバキあってたりとかの「ザ・ボンクラ映画」的な場面もちゃんと用意されてて全方位対応だ。

「世界一キライなあなたに」
この邦題と、イギリスの田舎町に住むヒロインが車椅子生活を送る地元の大富豪の息子の介護の仕事に採用されるって設定から、あー難病恋愛モノね。なんて思ってたら、確かにラブストーリーではあるんだけど、単なる色恋沙汰を超えた「人生を解放する」物語だった。
何が良いって、恋愛物語なんだけど「愛は奇跡を起こす」「愛は全てを変える」っていう「傲慢さ」が無い所。人が選んだ人生を頭ごなしに否定したりしないん だよね。例えばヒロインが独特過ぎるファッションセンスをしていながらファッション関係の仕事に進みたいというのを男の方は笑ったりしない。
これが最後の最後まで効いてくるんだけど、じゃあ「愛は無力だ」とはならずに「それでも人を愛していくことは素晴らしい」って方向に行くんだよね。何故な ら「自分が変わっていくから」。ここで邦題よりも「Me Before You」(あなたに出会う前の私)という原題がグッとくる。
でもやっぱ「出会いは最悪。最初は反目しあってた2人が次第に惹かれあっていく」って王道恋愛展開はやっぱ萌える! そしてヒロイン役のエミリア・クラー クがその太い眉を縦横無尽に動かして顔芸かって位の表情豊かさを見せていてめっちゃ魅力的。恋愛モノはやっぱヒロインの可愛さよ!
あと「自分が好きな物を相手が好きになってくれるとこれ程嬉しい事はない」って描写がいくつかあるがこれが良い。そうだよな。この映画の場合だと例えば外 国語映画、例えばクラシック音楽、例えばパリの街並み。その時の男側の表情が良いんだよ。最後は顔が見えなくても想像できるくらいに。

「スター・トレック BEYOND」
もう単純に宇宙冒険活劇として最高。リブート後3作の中では一番面白かったし、つか前作とか前々作とか予習する必要も無いです。今作で初めてスタートレック見るって人でも十分に楽しめます。特に後半の怒涛の展開は興奮しっぱなし。これが映画だ!
まずルックスがゴージャス。スケールがデカく、且つ細部まで作りこまれたビジュアルをフレッシュな見せ方で見せてくれるってだけでもう視覚快楽度がめちゃ 高い。まずエンタープライズ号関連がそう。内外部のガジェットもだけど、あの流体力学的なワープ描写とか、発射シーンのカメラワークとか。
あと今回出てくる宇宙基地ヨークタウンがスケルトン惑星といった感じで透明な巨大な球体の中に網の目状に都市が張り巡らされてるようなビジュアルが超良 い。「ズートピア」でタイトルの場所が出てきた時のような興奮がここでもあった。最初だけじゃもったいないと思ったらちゃんと後半にも出てくるし。
そしてアクションな。対戦格闘場面では若干チャカチャカ感があるけど、ちゃんと全体的にスケール感とスピード感を両立させたスクリーン映えするアクション が宇宙で、都市で、未知の惑星上で、と全面的に展開されていて、スタトレ云々じゃなくて今年の映画界での屈指のアクションエンタメ作になってる。
んであのクライマックスだよ。90年代洋楽ファンならご存知のある名曲が流れるんだけど、この場面がめっちゃアガる!(曲知らなくても曲調で問答無用でア ガる!)映画観ていると年に1、2回鳥肌が立つくらいシビれる瞬間ってのがあるんだがこの場面が正にそうだった。つか思わず涙まで流れた。
キャラクターの良さってのは言わずもがな。初めて見る人でもその個性豊かな面々は愛さずにはいられないキャラだし、そのキャラ達がバラバラになりシャッフルユニット的に組んでそれぞれの冒険を繰り広げて再集結を目指すって展開は分かりやすいし非常にワクワクさせられる。

「インフェルノ」
「ダヴィンチ・コード」のラングドン教授シリーズ第3作。今回は世界を股にかけその知識を駆使してテロリストから人類の危機を回避するという文系ジェームズ・ボンドみたいな映画。単なる薀蓄だけではなくスリラーとして新たな仕掛けを施して過去作との差別を図っている。
その最たるものが最初主人公が記憶を失ってるという展開。ラングドン教授が怪我を負って病院で目覚める場面から物語が始まり、主人公と同様に我々観客も、 何をなすべきなのかという目的はおろか現在が事件の序盤なのか終盤なのかすらわからない状態に放り込まれ迷宮に囚われたような感覚を体験できる。
身の潔白を証明しようとすると過去の自分にすら裏切られるような状態で、誰が敵か味方かすらも分からず徐々に記憶を取り戻しつつ手探りで進んでいくので気 を抜ける瞬間が無く、終盤にはタイムリミットサスペンスも加味されてきてラストまでずっと緊張感が持続されていく展開が手堅い。
今回用意される謎が、長い年月の中暗躍していた組織とかじゃなくて、ある一人の男が用意した物を辿っていくって物なので、過去作に比べると話のややこしさ はかなり抑えめ(時制が行ったり来たりのややこしさはあるけど)。なのでその分ラストの「歴史的ご褒美」感は薄めになるけどね。
「添い遂げることが出来なかった男女」ってのを2組登場させて並べて語る手法とか(ネタバレになるからこの2組とも誰のことなのか言えないんだけど)、複 数の組織が出てきて敵と味方が目まぐるしく変わっていく展開とか、過去作よりもドラマ部分のダイナミズムにかなり力が入れられてる感じ。
今回ラングドン教授を追う立場として出てくる「危機統轄機構」なる組織の総裁を演じるインドの名優イルファン・カーンが良いキャラ。黒幕的な立場ながら、 装飾を施した古代暗器のコレクションを持ち、必殺仕事人みたいにターゲットを確実に殺す実務までこなしていくのめっちゃカッコイイw

「映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!」
今回はまたシンプルというか、どストレートというか、「はじめてのプリキュア映画」みたいな面持ちで攻めてきたな。ただ話の中心がプリキュアじゃなくてモフルンなんだけど、それもまた「TVの番外編」としての「映画」ということか
今回の敵キャラの描き方がテンプレ(って言うと言い方悪いか)ってかまあ余りにも「王道」なんで逆にこの後もう一捻りあるのかななんて思いながら観てたん だけどそんな事は無かった。でもまあこれで初めて「映画」に触れるお子様も多いわけだから最初に「王道」を提示しておくことは正義なのだ。
「TVの番外編としての映画」の醍醐味の一つは「普段(TV)では行かない所にプリキュア達が行く」って事で、まほプリの場合、TVの時点で魔法界が存在 しちゃってるんだけど、今回はその魔法界で100年に一度のお祭りが開催されるってことで映画用の祝祭感を出しているし、後の展開の伏線も仕込んでる。
んでまあ今回の最大のキモは何と言ってもキュアモフルンですよ(これ映画観て初めてその存在を知るって展開だったら神映画だったんだけど)。喋り方がぬい ぐるみの時のモフルンのまんまってのが良いし、その声とあのルックスでプリキュアとしてのアクションをバッキバキにキメるのが超カッコイイ!
「相手のことを思いやろう」という王道メッセージに「いつでも思いを届けることが出来ると思うなよ。手遅れになることもあるぞ」ってのを追加して補強して いくドラマ性に隙は無し。笑いポイントもちゃんと押さえていて(口臭がキツいプリキュアって!)、優等生的プリキュア映画でした。


(画・文 P.I.L.)

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