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2016年 9月
現在映画感想置き場と化しております。

「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」
これ1作目より大分面白くなってるじゃん! 「仕掛けが作動している所」って見ているのが楽しいけど、今作は最初から最後まで様々な「仕掛け」が仕込まれていて、次々に繰り出されてくるそれらを追っていくだけで退屈知らずの面白さ。
全て実現可能な手品のトリックを使って、ずっと観客目線で騙され続けるのではなくマジシャン視線もふんだんに盛り込んで見せてくれるので楽しい。あと特に 「チーム連携プレイ」物が好きならばマスト。序盤で仲間のサポートを受けつつ主人公が次々と速着替えをしながら潜入していく場面から素晴らしい。
そして白眉は中盤のカードパス回し合戦の場面。何人もいる警備員に身体検査を受けながら仲間内でチップの仕込まれたカードを、カード捌き、衣装内の仕掛 け、視線の誘導、といったマジシャンのスキルをフル稼働してパス回ししてセキュリティを抜ける一連のシークエンスの繊細かつ大胆なアクションが最高。
この、マジシャンのスキルがあれば何でも出来る。ってのがちゃんと種明かしを交えつつ展開されるのでチート過ぎてシラけるよりは楽しさの方が圧倒的に勝 る。マカオで悪党共に追い詰められたマーク・ラファロがその場にある物を使ってジャッキー映画みたいなトリッキーな戦闘する所とかめっちゃ面白い。
出演陣もめっちゃ豪華だしね。マジシャンの映画に元魔法使いという狙ったキャスティングのダニエル・ラドクリフが小憎らしい悪役を演じてて結構ハマって る。実質主役のマーク・ラファロの役所に関しては前作のあるどんでん返しが前提なので、前作を見てないとちょっと混乱する部分があるかも。

「HiGH&LOW THE MOVIE」
「ザ・レイド」や「マッハ!」を見た時にアジアの他の国では出来て何故日本ではこんな映画が出来ないのかという思いを抱いていたが、映画としての出来では全然及ばないが圧倒的な熱量をスクリーンに焼き付けた大怪作としては全く引けを取らない化物だ!
簡単に言えば『俺が考えた最強の不良漫画』がEXILEパワーのおかげでスケール感を損ねることなく完全実写映画化されてしまったみたいな代物。ビッグバ ジェットなセット、ハイレベルなアクション、でも出ている殆どは演技の素人という奇跡のアンバランス(素人だから悪いと言ってるのではない)。
そして究極の『顔相撲映画』。出てくる人物全員が終始顔芸で押しまくる。「アウトレイジ」なんかも顔相撲映画なんだけど、あれは顔相撲があの社会で生きて いくために必須だったプロの顔相撲だったのに対し、こちらは素人の顔相撲大会。でも白竜や中村達也なんかのガチも紛れ込んでくるから油断できない
この顔芸合戦が受け付けないと言われたらそれまでなんだけど、出てくる奴ら全員が『俺が考えた最凶の不良』を嬉々として演じているからもうキラッキラして るのな! タランティーノ映画で役者達がタランティーノのキレキレの台詞を嬉々として喋ってるあの感じに近いかも(レベルの差はともかく)。
その中でも突出してるのがAKIRA演じる琥珀さん。オーバーアクトという言葉でも処理しきれないくらいどうかしちゃってて思わず笑っちゃうくらいなんだ けど、あれは演技云々じゃなくて「琥珀さん」のヤバさそのものなんだよ。だから俺達も「琥珀さんどうしちゃったんスか!」って言うしかないんだよ
TVシリーズ見てなかったけど特に困らなかったよ。まあずっと困惑はしてたけどな。全体の4割近く(個人的体感)が回想シーンで回想の中に更に回想が入っ てたりとか、登場人物多すぎなのに大部分EXILE絡みの面々なので馴染みが無いとキャラ相関掴むのに時間がかかるとかあるけど些細な事だ!

「スーサイド・スクワッド」
「魅力的なキャラクターが終始スクリーン狭しと暴れまわる」という映画の原初的な快楽に則った楽しい作品だったー。肯定派・否定派共に「もっと見せてくれよ」ってのが共通認識だと思う。長尺になっても構わないと思わせるだけの魅力がある映画だったよ。
スーサイド・スクワッドのメンバーがねぇ、全員良いんだよ。観る前興味があったのはハーレイ・クインとジョーカーくらいだったんだけど、エンチャントレス とかエル・ディアブロとかキャプテン・ブーメランとかも良いキャラでさぁ、十分単体で間が持つ奴らばかりが集まってワイワイやってて楽しい。
単に能力だけじゃなく「悪」の要素自体がバラバラなんだよ。娘の為のビジネスなデッドショット、逆に悪の道から足を洗おうとしてるエル・ディアブロ、見た 目の異形性から悪の道に行かざるを得なかったキラークロック、完全なドチンピラのキャプテン・ブーメランと外見だけじゃなく中身もバラエティ豊か
そんな奴らがここぞという場面で「侠気」で動く任侠映画なんだよ。デッドショットがヘリで逃げるあの人物を狙撃する場面、カタナが戦いの前に泣きながら刀 に語り掛けるのを皆でそっとしておく場面、エル・ディアブロがクライマックスの戦闘で見せる頑張り、とか結構浪花節な映画なんだよな。
そしてあのジョーカーすら映画内の行動原理が完全なキチガイのふりをしながら実は全て惚れた女の為という侠っぷり。萌えるじゃないですか。まあ単純に男女 の惚れた晴れたの関係性を越えた所にあるけどね。あの回想での薬液シーンとか、同じ盃を交わした兄弟分つーかソウルメイトみたいな感じだけど。
薬液シーンを補足しておくと、ジョーカーの白い肌って白塗りじゃなくて昔薬液を浴びて肌の色素が抜け落ちてるんだよね。でハーレイ・クインに俺と同じよう になる覚悟があるか、ってのがあの回想シーンなんだけど、台詞による説明とか無かったからな。まあ何となくは雰囲気で分かるけど。
という侠気野郎達の中で完全にフリーキーに振舞ってるハーレイ・クインさんの目立つ事w 可愛いわぁ。つか単純に見た目が最高だろ! 着替えのシーンと か、エレベーターを降りた後のお尻プリプリさせながら歩く所とか! 全体的にハーレイ・クインさん以外の女性キャラも良かったよねー。
人妻の野暮ったい色気のカタナさんとか、エンチャントレスは腰振りダンスが妙なインパクトの魔女体も眼鏡っ娘の人間体も可愛いし(あと最初に人間から魔女になる場面の演出が良かった)、あと指揮官のオバサンは…ニック・フューリーが中学生に見えるくらいの冷酷さだった。

「怒り」
日本映画主役級オールスターキャストによる超絶演技合戦とエモーションの連鎖爆発が起こる濃厚演出でとてつもない満腹感が味わえるドラマ。ミステリーとし てのフックを持ちながら同時進行していく3つの物語、脇役に至るまでキャリアベスト級輝く演技、長尺も気にならない充実ぶり。
ひたすら抑制された演技・演出をよしとする精進料理か、安易な感動をただドバドバと盛り付けるジャンクフードか、の二極化な状況のメジャー日本映画界にお いて、最高の食材を最高の腕を振るってフルボリュームで振る舞うまさに「御馳走」と言っていい日本映画でありました。いやあお腹一杯堪能したー。
現場に「怒」の血文字が残された夫婦惨殺事件、行方をくらませた犯人、1年後千葉、東京、沖縄に現れた3人の素性の知れない男。「誰が真犯人か」という謎 をフックにしてぐいぐいと引っ張っていきながら、最終的には犯人捜しを超えたドラマが3か所でそれぞれ待ち受けていて、引き込まれっぱなし。
共通するのは「信じてやることができなかった」という痛烈な悔恨であり、またその「人を信じる」という行為のとてつもない難しさ、ちょっとした情報から簡 単に疑惑というものは生まれ膨らんでいき、愛によって繋がれたはずの関係性がその疑惑によってあっさりと崩壊してしまう悲しさが描かれている事。
んでそれらを体現する役者陣がまあ素晴らしいこと。渡辺謙はいつもの渡辺謙なんだけれども、その娘役の宮崎あおいが素晴らしかった。あの「ちょっと足りな い子」演技の圧倒的な説得力から、初登場時の風俗店での虚ろな顔から最後の電車の中のシーンまでとにかく台詞を超えて表情が素晴らしい。
容疑者候補となる3人の男も、松山ケンイチが序盤で見せる底知れない表情(ライティングも良い)、森山未來が終盤で見せる壊れ物のような狂気、そして綾野 剛の魔性のエロ可愛さ(身体つきからしてエロい)、と真犯人じゃなくても全員ハッとする見せ場がある。そもそも犯人>非犯人のドラマじゃない。
3つのドラマが絡み合うことなく同時進行で進んでいくけど編集が巧みなため、混乱したり気が散ったりすることなく1本の映画としてすんなり入っていける。 千葉で父娘が聴く音楽から東京のパーティーへとか、東京で荷物を処分する所から沖縄の旅館の荷物を投げる所へ、とかDJばりの「繋ぎ」が上手い。
その分、終盤で一つの映画のクライマックスに相当する熱量が三つ分になって次々と押し寄せるクライマックスは渡辺謙が崩れ落ち、妻夫木聡が号泣して彷徨 い、広瀬すずがありったけの感情を吐き出して叫んで、もう腹いっぱいというか疲弊しちゃうレベルだけどな。そのこってり具合も味だ。

「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」
近年社会派寄りになってたスピルバーグ先生(ちゅてもしっかりエンタメしてるけど)久々のガッツリファンタジー作品。本当に良く出来た飛び出す絵本を見ているような、大人も子供も楽しめる視覚的ワクワク感に溢れる天才の技巧が炸裂した映画。
小さな子供の時に観てたら、年をとって細かいストーリーは忘れていても個々の印象的な場面はずっと記憶に残っているようなそんな映画。本当にこれだけたく さんの映画を撮っていてもいまだにハッとするような場面を作り続けてるスピルバーグ先生は昔のような神通力は無くても今でもかなり凄いんだって。
例えば、序盤に身長7mの巨人が夜のロンドンの街を人々に見つからないように巧妙に隠れながら進んでいく場面の鮮やかさや、少女が巨人の家に連れてこられ てからのあちこち色んな手段で移動させられていく様のジェットコースター感とか、巨人が夢を作る場面のグラフィカルな感じとか枚挙に暇がない。
そして終盤、子供を食べる悪い巨人たちを退治するためにある人物に助けを求める所から、おとぎ話特有の「壮大なホラ話」の領域に突入していって楽しい。ガ リバー旅行記的なあの食事のシーンとか、その後まさかの「戦争映画」になだれ込んでいく所なんかはもうここいらはスピルバーグ先生お手の物。
吹替え版で観たけど、巨人の訛りというか言い間違いというか独特の言語感覚がストレートに味わえたので良かった。オリジナルのマーク・ライランスも良い芝 居してたんだろうけど、吹き替えた山路和弘氏が暖かみのある良い芝居してるんだ。ジェイソン・ステイサムだけじゃないぞ。

「聲の形」
同じく現在ヒットしているアニメ映画の「君の名は。」と比較するよりも、アニメならではの長所を生かしながらも、学校内外における同調圧力によって生み出される軋轢を残酷に描き出したとして「桐島、部活やめるってよ」と並べて語るような真摯なドラマでした。
障碍者云々で話題になってるけどメインテーマは「思いを伝えることのとてつもない難しさ」そして「それでも思いを伝える努力は放棄するべきではない」とい う若者に対しては、いや人間全般に共通する代物だよね。是にしろ非にしろ「君の名は。」とはまた違った意味で「語りたくなる映画」だと思う。
個人的には今までの学園ものではそんなに大きく取り扱われることは無かったけど、学生生活において(学生だけじゃないか)意識的・無意識的に行われる「保 身」というファクターをフィーチュアしてるのが学園ドラマとしてのリアリティラインを一段押し上げてる。言い方変えると今後のハードルを上げた。
単純にアニメ映画として風景描写等の街の空気感を伝える「画の綺麗さ」も素晴らしいんだけど、アニメで描くことによって物語上ついて回るエグみをある程度 中和させている効果もあるのではないか。手加減してるという意味ではなく。これまんま同じで実写でやってたらかなりキツかったんじゃないかなぁ。
あとクライマックスの「世界の見え方が変わる瞬間」という物をこれ以上分かりやすくかつダイナミックに表現してきたのは凄かった。アニメだからというより はこの映画だからと言うべきだろう。それくらい他ではもう2度と使えないような手。「フィッシャー・キング」の駅のワルツシーン級。
にしてもヒロイン役の早見沙織の演技が神懸っていたなー。心の内を台詞ではなく文字通り「声」や「息」で絞り出すように懸命に伝えようとする芝居が素晴らしかった。基本的に女優陣皆良かったよね。主人公の少年時代を演じた松岡茉優も含めて。


(画・文 P.I.L.)

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