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2016年 8月
現在映画感想置き場と化しております。

「アンフレンデッド」
全編主人公のラップトップの画面上で進行するという野心的なホラー。と言っても単に奇を衒っただけではなく、この手法によって、SNS世代にとっては恋も友情も嫉妬も恨みも裏切りも、全てがネット上にある。という今の雰囲気を見事にパッケージングした一本。
Skypeのグループ通話で会話する6人の若者、そこに入ってくる見知らぬアカウント、それは1年前に自殺した筈の友人のアカウントだった。そこから6人 の若者は死のゲームに巻き込まれていく…。ビデオ、携帯、とホラーはテクノロジーの進化に追走してきたがその最新形。ホラーは時代を映す鏡だ。
PC画面上だけで進行するが、各ツールの使い方が絶妙。YouTubeを使って状況の前提設定を説明したりとか、音楽再生ツールを使った恐怖演出とか、 Facebookのダイレクトメールを恐怖新聞的に使用したりとか、Googleで解決法を模索したりとか、情報の奔流っぷりが今っぽい。
単なる超常現象ホラーだけでなく心理的なソリッドシチュエーションスリラーでもあるのがポイント。動画、チャットログといったデジタルデータの提示のタイ ミングによって、呪いの力を行使しなくても若者たちが疑心暗鬼に陥ってお互いを破滅させていく方向に進んでいく様がスリリング。
Skypeによるグループチャットの裏でDMによって特定のメンバーとやりとりをする様とか、主人公がメッセージを送信前に書いたり消したりする内容、そ して送信するタイミング自体によって心情の変化をリアルタイムで映し出すのはこの手法だからこそ出来る技でここは凄く感心した。
画面的に代わり映えしないんじゃないかって思われるかもしれないけど、前述の複数のツールを併用した情報量の洪水とかで退屈する暇無いし(他人のデスク トップ覗き込んでるという興奮も僅かながらある)、ビデオチャットのノイズが「この世じゃない感」を醸し出してて、何か起きる前でも怖さが充満。

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
40〜50年代に吹き荒れた赤狩りでハリウッドを追放されたものの匿名で書いた「ローマの休日」がアカデミー賞を受賞した脚本家ダルトン・トランボの激動の半生を描いた実話ベースの物語。思想云々の前にこの映画、単に話がめっちゃ面白い。
前半でハリウッドで売れっ子脚本家だった主人公が赤狩りの標的となり仕事を失うのだが、ここからが面白くて、大手スタジオが何処も仕事を依頼しない中、B 級専門の映画会社の脚本を書き始めるんだけど、弱小高校に超高校級の選手がやってきた!的な面白さがあるんだよね。大洗に来たみぽりんっつーか。
1本の単価が安いため、来る仕事は全部受ける!ってなって自宅が脚本工場といった様相を呈してくるシークエンスがめっさ面白い。家族に電話番や脚本の配達 をさせ、自分は同じく仕事を失った仲間を引き込み、いくつもの偽名を使い分けて低予算アクションやSFの脚本をひたすら量産していく。
そしてオスカーを受け取ることすら出来なかった主人公が時代の変化と共についに表舞台に復帰していく終盤の展開はやっぱアガる!勿論単純な話じゃないんだ けど勧善懲悪のカタルシスというか、不遇をかこっていた主人公がその能力にふさわしい対価を得るってのはスカッとするじゃないか。
思想を貫くとか(ただこれ見ると主人公は結構現実的なスタンスを取る人なんだよね)、家族の支えとか、そういうテーマも盛り込まれてるんだけど、やっぱ主 人公の最大の勝因は「書き続けたこと」なんだろうな(それを可能にしたのが前述の2つでもあるんだけど)。腐る暇があったら手を動かせ。
今作でオスカー候補になった主演のブライアン・クランストンは勿論良かったんだが、各キャラクターがとても良くて役者がキャラの魅力を曇りなく表現できて るのが強い。B級映画会社社長とか、復活の立役者であるカーク・ダグラスやオットー・プレミンジャーとか本当イイ奴なんだよ。

「X-MEN:アポカリプス」
結局ブライアン・シンガーかー、前作は新旧オールスターキャストで楽しめたけど今回はどうかなー、なんて思っていたのですが、これが新3部作、そして新旧6部作を締め括るに相応しい良作だったのだ。ブライアン・シンガー監督作ではベスト。ごめんねブライアン。
80年代を舞台に旧3部作のメインキャラの若かりし姿を出してきっちりと円環を閉じる構成が見事。旧3部作を見ててあのキャラのX-MENというシリーズ 全体における重要性を知っているとあのクライマックスは泣ける。つか泣いた。アポカリプスよ、誰が最強のミュータントか知ってるのか?と。
旧キャラで言えば、サイクロップスとジーン・グレイのボーイ・ミーツ・ガールかと思いきや、そこにウルヴァリンを絡ませて後のドロドロの三角関係を暗示さ せる所とか憎いね。ストームとナイトクローラーもフレッシュで良かった。クライマックスのバトルロイヤルも含めキャラの絡みはバッチリだった。
アクションも全体的に良かった。冒頭のピラミッドの場面からして単なる今回の悪役紹介場面かと思いきや面白かった。クライマックスの全キャラ登場バトルロ イヤルもシビルウォー的で良かったが、今回の白眉はクイックシルバー大活躍の場面。前作以上にキテます。これに関してだけはマーベルに圧勝。
これでマカヴォイのチャールズやファスベンダーのエリックに会えなくなるかもと思うと寂しいが、見事に有終の美というか、シリーズを追いかけてきた身とし ては、ありがとう。ブライアン・シンガーありがとう。という作品に仕上がっていたので、映画館で見届けると良いんじゃないかな。
あと今作の良い所は、シリーズが続くにつれ、パワーインフレでかつての最強キャラが雑魚化する事無く、アポカリプスというラスボス的なキャラが出てきても、プロフェッサーXはある意味で最強、マグニートーはある意味で最強、という位置をキープしている所。


「劇場版アイカツスターズ!」
TVシリーズ見ずに劇場版を観た訳だが楽しめたよ。いや、TVシリーズ見てたらあの人がこんなことしてる、って楽しみ方も出来たんだろうけど、とにかくもうヤバイくらいの高純度女児友情物でした。ギリギリアウトで友情を踏み越えてしまっていたかもしれない。
映画だけ観た感想だけど、メインが3人組でカップリングがフレキシブルだったアイカツと違って、アイカツスターズってもう主人公がガッツリカップリングさ れてるのね。もうはっきり言葉に出して愛の告白してたし、キスもしてた。え、してなかった? 俺にはしてるように見えたけど。
南の島を舞台にして、学園ものにおける修学旅行エピソードのような特別なワクワク感が劇場版という観客にとっての特別なワクワク感にシンクロしつつ、相手 を思うが故のすれ違いからの和解という王道エピソードを展開する事によって単なるTVの番外編ではない1本の映画としての強度を獲得している。
勿論ステージ的な見せ場もきっちり。ちゅかアイカツスターズって楽曲にダブステップ取り入れたりしてるのね。そっちにビックリしたわ。あとS4やM4の事 は今回の映画ではよく分からなかったけど、同級生の眼鏡の子とネコキャラの子の2人組は可愛かったなー。ネコキャラの子好みかも。
同時上映の「アイカツ! ねらわれた魔法のアイカツ!カード」はプリキュアオールスターズに対するアイカツオールスターズでした。こっちは逆にメタ的な構 成で劇中で映画を撮るという設定で、様々なジャンルを呑み込む映画オールスターズ、もしくはアイカツ版「監督・ばんざい!」でもありました。
恐竜もの、スポーツもの、レースもの、時代劇、恋愛もの、ファンタジー、SF、と様々なジャンル映画を呑み込んでいっても常に一定の(我々がお馴染みの) トーンを保つことが出来るのは、強靭な胃袋を持つ「アイカツ!」というバケモノだからこそなせる技。同時上映だからこそ出来る冒険でもあるけど。

「ジャングル・ブック」
「ライフ・オブ・パイ」(2012年)を観た後、虎がCGだったと聞いた時は衝撃を受けたが、今作はその衝撃の延長線上に存在している。アニメ的な演技やデフォルメではなくリアル造形と動作なのに動物たちにエモーションを吹き込むことが出来ているのは流石。
実質CGアニメなんだろうけど、やはり動物、自然共に「実写」の質感、手触り感があってやはり「実写化作品」と呼びたい。動物同様にジャングル自体も魅力 的で、箱庭感は無く良い塩梅で映画用舞台に仕立て上げられた自然公園感があって、冒頭の追いかけっこから始まり、この中を散策する感覚が楽しい。
オリジナルの話は知らなかったんだけど、動物の生態系の再現というよりは、それぞれ「人間のある一面」を投影した様々な動物たちに触れ、彼らが良くも悪く も教師となって主人公の少年が成長していくって話なのね。自然サイエンス的な話かと思ったらもっと人間の核に触れるような話だった。
個人的には巨大類人猿のキング・ルーイの場面がお気に入り。廃墟となった寺院で猿のコロニーを統治し、ジャングル内のすべての知識を手に入れている男(猿)。王様気取りのふてぶてしい態度が良いし、周りをチョロチョロしてる手下のサルたちの挙動が何か可愛らしいんだよなw

「ハイ・ライズ」
長い年月の果てに人間の文明が衰退していく様子を描いた文明崩壊モノSFを、2ヶ月間の一つのマンション内に凝縮させたような濃厚な物語だった。閉じた世界の中で住人たちがどんどん退化していく様がスタイリッシュな映像で描かれていてグロテスク&ビューティフル。
高層階に住む上流階級、低層階に住む労働者階級、というマンションの階層をそのまま階級に置き換えた衝突が繰り広げられるんだけど、上級も下級も文化レベ ルがどんどん下がっていって野蛮人となっていきマンション内の縄張り争いという部族間同士の抗争といった様相になっていくのが面白い。
文明崩壊モノSFは我々が知っているような施設(ファーストフード店とか)が崩壊している様を見てその間に何があったか想像が巡らせられるようになってる けど、今作ではプールやジムやスーパーといったマンション内のラグジュアリーな施設がオンタイムで徐々に崩壊していく様が見られるのがスリリング。
そんな中、中層階に住む中流階級の主人公の目を通して我々観客は崩壊の様を目撃していく訳だけど、この主人公が単なる傍観者ではなく、最初から狂気を内包 していて、崩壊した世界にやっと自分の居場所を見つけた感じになってる。ってのに観客はつき合わされるのでクラクラするんだよ!
ちゅか主演のトム・ヒドルストンって「美しい人間の皮を被った何か」を演じさせたら右に出るものはいない人だもんな。単なる傍観者で済ませられるわけが無 いんだよ。にしても肉体もスーツ姿も実にセクシーで映像もキマってるので(舞台の70年代デザインも良い)トムヒ鑑賞映画としても上物。

「ゴーストバスターズ」
往年の傑作娯楽映画のリブートにして、現行アメリカンコメディの最先端の作り手によるコメディ映画の最新作。楽しくない訳が無い。最大公約数的な作りではあるが若い人にはオリジナルが持ってた楽しさを、邦画主体の人には米コメディの楽しさを体験させる最適のツール。
はみ出し者たちがエキセントリックなガジェットを駆使してゴーストを退治しNYの危機を救っちゃうという基本ラインはそのままに(でなきゃ「ゴーストバス ターズ」じゃないからな)あちこちで現代的なアップデートが行われている。特殊効果→CGは勿論、最大の物は主人公達を女性に置き換えた事。
性別転換は単に見栄えを変えるという訳ではなく、人間ドラマとしては実はオリジナルよりも深くなってて、今作ではオリジナルのように最終決戦の際に市民の 喝采を浴びるみたいな展開は無いんだけど(だから最後のオマケ映像はグッとくるのだが)、「自分の人生を証明できた事」を落とし所にしてて熱い。
兎に角見た目だけでも楽しい映画だからな。まずはあの豊富なガジェット群な。専用車「エクト1」からプロトンパックを引き出す様を上から撮ったショットだ けでもうアガるっしょ。捕獲ユニットからフットペダルがポーンと飛び出す所とか、デザインだけじゃなく挙動の一つ一つが気持ち良いんだよ!
そして魅力的なキャラクター達。全員トップレベルのコメディエンヌ達だけど、やっぱアナーキーかつセクシーな兵器開発担当ホルツマンを演じるケイト・マッ キノンが最高。クライマックス、二丁拳銃ベロリからのメインテーマに乗ってゴースト無双していく見せ場なんかもうフーッ!ってなるよな。
あとクリス・ヘムズワースが凄い。見た目だけで頭空っぽの女性というステレオタイプへのアンチテーゼのキャラだろうけど、そういう存在意義を突き抜けた底 なしの馬鹿ぶりが清々しい。ピンチに陥れることも救う事も無くただ馬鹿として存在するという恐ろしくも愛おしいキャラクターとなってて凄え。
オリジナルを見てなくても全然楽しめる映画ですが、やっぱオリジナルへの敬意、オマージュってのは溢れてます。特にオリジナルキャストのカメオ出演はただ 画面に出しましたって感じになってないのは好印象。アニー・ポッツ(オリジナルの受付嬢)まで出てくるとは! 最後まで気が抜けないよ。

「ライト/オフ」
明かりが無い暗闇の時だけ現れる”何か”に襲われるホラー。ワンアイデア物だが、超怖え!&超フレッシュ!で面白い。何より作り手側が画も音も全て駆使して手加減無しで本気で怖がらせにかかっているのがもうね、「ありがたい」って感情すら沸き起こってきますよ。
人間が元来本能的に抱え込んでいる暗闇への恐怖。大人になって夜の闇も全然平気になってきたと思ったのに、そんな俺達を暗闇に怯えていた子供の頃に戻しや がる! 暗闇に潜む化け物に襲われる話を真っ暗な映画館で見せるとは正に鬼畜の所業(褒め言葉)。ってんで是非とも映画館で観るべき映画。
明かりが点くとパッと消えて、明かりが消えるとその場にパッと現れる今作の化物の形態がフレッシュ。暗闇と言っても完全な真っ暗だと何も見えないので奥の 部屋から漏れる微かな明かり等によってシルエットだけが浮かび上がるって構図が「何か分からないけど何かいる!」って凄く不安感を煽り立てる。
明かりがあると消える、ってワンアイデアのみを崩すことなく(ここは高評価ポイント)厳守して突き進むけど、単に電気照明だけではなく「明かり」にバリ エーションを持たせることで飽きさせる事が無い。特に主人公のボーイフレンドが襲われる場面の様々な光源を駆使する畳みかける展開とか白眉。
だけどドラマが置き去りにされることも無く、毒親の悲哀が描かれてたりとか、ヤンデレ百合要素が盛り込まれていたりとか、謎解き要素とか、決着の付け方と か、結構物語としても十分に見応えがあるんだよね。なのにダラダラせず81分というタイトな尺にまとめられているのも素晴らしい。

「君の名は。」
素晴らしかった。作家性はそのままにここまでのエンタメ性を獲得してるとは思わなかった。いやもう新海作品で単にストーリーだけでハラハラドキドキさせられるとは。全編にみなぎる圧倒的な映像と情緒の力で107分テンションをトップにキープさせたまま走り切る。いや凄い。
目が覚めた時、夢を見たことは覚えてるんだけど、夢の中で抱いた感情だけは何となく覚えていて、内容自体は時間が経つにつれて加速度的に記憶から溶けてな くなってしまうあの感覚。あの名状し難い感覚を見事に映像作品として落とし込んで時空を超えた男女の逢瀬に昇華させてるってだけで凄いと思う。
アニメ映画って偉くなると物語の裏側に「良き事・深い事」を言おうとして説教臭さが漂いがちになるけど、映画の中の全ての要素をボーイ・ミーツ・ガールの 為に使役させてるという純真さと言うか潔さのおかげで、この映画が圧倒的な強度を獲得してるから深く刺さるぜ。心を刺す純粋な武器と化した。
青春映画的な要素は勿論の事、SF的な要素、ファンタジー的な要素といった所(例えば「1200年に一度訪れる災厄を回避する役割のために特別な力を授け られた巫女の血筋」とかな)も全ては立花瀧という少年と宮水三葉という少女の出会い(そして「すれ違い」(←ココ重要))の為に存在している。
いや、正確に言うと「出会う」物語じゃなくて「出会おうとする」物語なんだよな。だからこその一生懸命さ、切なさが心を打つんだよ。「将来忘れちゃいけな い事」よりも「今伝えなくちゃいけない事」を優先させたクライマックスのあのメッセージが映し出された瞬間に俺達は号泣メーンになるんだよ。
今更「映像が素晴らしい」とかはいいよね。相変わらずの『美術萌え』映画なので、何も起きてない瞬間が退屈することは一切無いし、逆に何も起きてない場面 をもっと見せてくれって気分にすらなる。田中将賀によるキャラクターが良いのも言わずもがな(特に男の子達が可愛いんだよな)。
メイン2人を演じた神木隆之介と上白石萌音も素晴らしかった。特に神木きゅんな。中身が三葉の時の神木きゅんの演技が女子力高過ぎでもう可愛すぎて可愛す ぎて! 先輩役の長澤まさみも良かったし。「歌」の役割が高すぎる音楽はまあ新海作品の特徴なのでこれは人それぞれとしか。


(画・文 P.I.L.)

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