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2016年 7月 
7月31日(日)
もう2週間後だよ。
告知。

コミックマーケット90
 8月 14日(日)
東地区“V”ブロック−25a
「RICK RUBIN」(リック・ルービン)

ってんで一つ。取りあえず新刊の入稿は済んだんですけどね。コピー本をどうするかまだ迷ってる最中なんでお品書きはイベント直前に。

んでは今月の映画日記。

帰ってきたヒトラー」。
ヒトラーが現代のドイツにタイムスリップ。本物そっくりの物真似芸人として人気を博していくが…と言う内容。単にギャップコメディとしても笑えるんだけど、博していく『が…』の部分がキモで単なるお笑いに収束されず牙を剥いてくる部分がスリリングな秀逸作。
ヒトラーが現代ドイツに現れたら、という「完全な絵空事」を映画に施された様々な仕掛けで「絵空事」の境界線を揺さぶっていき、「絵空事」で済まない感じにしていくんだよね。タイムスリップを腑に落ちるものに持って行こうとする流れをぶった切る終盤の展開とかさ。
サシャ・バロン・コーエンの「ボラット」や「ブルーノ」みたいに主人公が俳優じゃなく素のキャラクターとして実在の市井の人と交わっていく場面があって、 序盤のクリーニング屋の下りなんかは完全にコントだけど、中盤ドイツ中を巡ってドイツ国民の本音を引き出していく辺りは別の意味で面白い。
更には、この映画自体が小説の映画化なんだけど、映画の劇中で登場人物が同名の小説を書き、映画の中で映画化するという入れ子構造のメタフィクションが展 開して、映画内現実の壁を崩壊させる仕掛けがまたこちらをザワザワさせるんだよな。また実際の現実でイギリスのEU離脱とかあるしさぁw
そして笑いと戦慄の2項を見事両立させるヒトラー役が見事。小男のイメージがあるヒトラーだけど、この俳優は背も高くて威厳があるんだよね。圧倒的な演説 のスキルを駆使して、2015年でもネットといった現在のメディアを使ってプロパガンダを広げていく所は言い方悪いかもしれないが「頼もしい」。
そういう部分も前半〜中盤の笑いのパートがしっかりしているからこそ。前述のクリーニング屋の下りとか、犬の下りとか。特に「ヒトラー 最期の12日間」 のパロディシーンは館内でもめっちゃウケていた。後半のヒトラーとネオナチが変な関係になっていく所とかも別の意味でコントだよね。

疑惑のチャンピオン」。
ツール・ド・フランスで前人未到の7連覇を達しながらその後のドーピングスキャンダルでその栄光を剥奪されたランス・アームストロングの栄光と転落を描いた実録ドラマ。正に「汚れた英雄」としか言いようが無い、自転車レースに詳しくなくても楽しめる人間ドラマ。
ランス・アームストロングが王者たりえたのは他者よりも強固な「勝利への意志」なんだけど、その意志が強固過ぎるために倫理の境界を飛び越えてしまい、都 合のいいように自分の中で解釈を書き替えていく様が面白い。自分でついた嘘を事実だと思い込んでしまうようなあの感覚が描写されてる。
この倫理観を踏み越える感覚の鈍みが業界全体に蔓延してる部分の方が空恐ろしい。ミケーレ・フェラーリ医師が新薬の発表会で「それをアスリートに使用する とどんな効果がある?」と質問して「それは倫理に反するのでは」と言われて、素で「何で?」って感じの反応してる所とかさ。
チーム内で大量の注射針を用意・使用・廃棄する場面とか、ドーピング検査の医師がやってきて、慌てて血液を薄めるための点滴をする場面なんかもゾワっとす るんだけど、一番ゾクッと怖かったのは、マスコミにチクったレーサーに対してレース中に他の選手が次々に罵声を浴びせかける場面。
更にチーム内ヒエラルキーとか、外部を巻き込んだ金の問題とか、アスリート側とジャーナリスト側とのしがらみとか色々絡んできてドロドロの様相を呈してく るんだけど、ロードレースに限らず、世界のプロスポーツの分野全体に関わってくる問題だと思わせるのがこの作品のターゲットを狭めない要因か。
レースがメインの映画ではないのでレース場面は少ないんですが、しっかり作ってあるように感じました(あとアーカイブ映像も多め)。ちゅても詳しくないん でどれだけ再現されてるのかよく分からないのでこれ以上言及できないんですが。観た人の間で話題の「コンタドール似てない問題」とかw

シング・ストリート 未来へのうた」。
「ONCE ダブリンの街角で」「はじまりのうた」の監督による新たな音楽映画の傑作! 85年のダブリンを舞台に当時のロック・ポップスをふんだんにまぶしながら、バンドを始めた少年を描くキラキラの青春劇。音楽の魔法が詰まった大傑作!
主人公が「トップ・オブ・ザ・ポップス」に映るデュラン・デュランのPVに衝撃を受けるという序盤から世代的にはどストライク。女の子にもてるためにバン ドを始めるってのは時代問わず普遍的な物なんだけど、PV撮るから出てよって口説くのは音楽と映像が不可分だったMTV興隆期の80'sって感じ
素人の高校生が集まってPV撮る時の、思いついたアイデアをとにかく詰め込んでいこうとするグダグダ感、ガチャガチャ感、でも時間が経つのも忘れるような とてつもないワクワク感ってのが本当に観てて楽しいし微笑ましい。ハルヒでSOS団が映画を撮るエピソードのあの楽しさに通じる所がある。
んで肝心の音楽の方に説得力が無ければ映画の出来に直接響く要素なんだけれど、そこは前2作でも実績があるだけあって、主人公達のバンドのオリジナル曲が どれも当時っぽさを押さえつつ今聴いても魅力的。あとこの監督は「曲が形になる瞬間の高揚感」ってのを掬い上げるのが本当に上手い!
主人公達の若さゆえの「素直さ」(良い言い方してます)も微笑ましい。ザ・キュアーを聴けば白塗りしちゃうし(黒人メンバーまでw)、スパンダー・バレエ見ればファッション真似しちゃうし、ホール&オーツ聴けば似たようなベースラインの曲を作っちゃうw
ただこのホール&オーツの使い方も両親が大喧嘩してる声が聞こえないように部屋で大音量でかけて、その後に作った曲が「アクセルを踏んで人生何処にでも行 ける」という内容だったりして、曲が生まれる背景を言葉による説明無しで見せていく(他の曲もそうだ)ってのが素晴らしい。
もう出てる奴ら全員良いんだよな。主人公の曲作りのパートナーとなるバンドメンバーは初期U2みたいなもっさりした風貌が愛らしいし、普段は家でハッパば かり吸ってるが主人公にロックを教え込みロック金言を連発する主人公の兄はブレイク時のジャック・ブラックのキャラみたいで凄く良い。
あとこの監督の作品はどれも、ほろ苦展開がありながらも最後は主人公が新たな希望の入口に立つ所で終わるって所が良いんだけど、今回も文字通り嵐の中を船 出する主人公を捉えて、その背中を押すアダム・レヴィーンの力強い主題歌、そしてラストの主人公の表情の素晴らしさといったら!
バック・トゥ・ザ・フューチャーオマージュの妄想MVの場面の「あったかもしれない幸せな未来」感が切な美しいとか良い場面上げていったらキリが無いわ。

死霊館 エンフィールド事件」。
怖くて面白い!面白くて怖い! スプラッターのように表現を過激化させるのではなく(血すら出てこない)、「スクリーム」や「キャビン」のようにメタに尖っていくのでもなく、クラシカルな風格を備えながらフレッシュな演出がビシバシ決まる現代ホラーの傑作。
「ソウ」「狼の死刑宣告」「ワイルド・スピード SKY MISSION」とホラー・スリラー・アクション全てで確かな実績を誇る信頼のブランド、ジェイムズ・ワン監督の手腕が今回も冴えまくる。溜める所と畳み かける所がドミノ倒しのように連なっていき、静謐な感じなのに全くだれることが無い。
ものすごく怖いのに不快さは一切無く映画としてとても面白いというエンタメホラー映画として「ポルターガイスト」(スピルバーグ製作・脚本、トビー・フー パー監督)の正統な後継者がようやく出てきたって感じすらある演出のアイデアの宝庫。唯一の不満があるとしたら「怖くて心臓に悪い」とかか。
あとこの映画、家族愛や夫婦愛というのがしっかり描けてるってのが良い。主人公がプレスリーの物真似をしながら「好きにならずにいられない」を弾き語りす るシーン、被害者家族を元気づける場面ながら同時に妻へのラブソングになってるあたりが憎い。ジェイムズ・ワン、ラブストーリーも撮れるんじゃ。
テレビのリモコンやおもちゃの車といった日常アイテムを使ってじわじわと恐怖を蓄積していき、最後にはアクション映画かって程の怒涛のクライマックスを迎 えていく展開とか、謎解きやどんでん返しを内包してたりとか、ジャンルを抜きにしても単純に1本の映画として非常に面白い。

インデペンデンス・デイ:リサージェンス」。
ローランド・エメリッヒによる地球破壊祭りじゃーい! 前作から20年。単に「今の技術ならもっと凄いモンが出来るぜ!」という心意気のみで作られたような一点突破型映画。続編で続きの話なんだけど、前作の技術的バージョンアップ版って感じ。
前作より更に大きい敵の宇宙船(アメリカ本土級の大きさ。こんなん武器積まなくても地球に飛来するだけで人類滅びるだろw)、前作より更に大きい都市破壊 (都市ごと持ち上げて落とす。エイジ・オブ・ウルトロンだったら人類滅びてた)。でも絶望感よりはやっぱ祭り感の方が強いんだよなw
今回は人類側のテクノロジーが進化してて、科学力の絶望的な差が希薄になってるってのもある(えらいカジュアルに月と地球を行き来したりする)。まあ、そ れによりスター・ウォーズかってな空中戦が出来たりするんだけどね。とにかくルックスのインパクト最優先なのであまり深く考えないが吉。
攻撃を仕掛けるパイロット達、状況に翻弄される上層部、対抗策を探る科学者達、親をなくし避難する姉弟、敵の破壊活動の現場に居合わせたサルベージ船のク ルー…といった地球規模の危機に各所で直面する人々という群像劇の面白さは前作同様。前作のあの人がこんな形で登場といった楽しみもあり。
でも実は前作観てなくても話としてはあんま問題無し(実際、俺、あの昏睡してた科学者が前作でどうだったかとか全然覚えてなかった)。若手メインキャラ3 人の間の確執とか関係性とかも前作とは全く関係無い今作だけの物だし。なんとなくの記憶でも特に苦労した所とか無かったよ(終盤、ジェフ・ゴールドブラム と合流した父親の「世界が崩壊しないとお前と会えないのか」って台詞は笑ったw)。
前作に無かった今作だけの特徴と言えば、終盤の怪獣映画要素。これが結構しっかりと怪獣映画してた(欲を言えばやっぱ都市部で暴れて欲しかった。荒野でス クールバスとの追いかけっこだけってw)。あと「これだからアメリカ人はw」的なあの威勢の良い終わり方な!(エメやんドイツ人だけど)

ファインディング・ドリー」。
安定高値のピクサーブランド。前作でトラブルメーカーだったドリーが主人公ってことでイラつかせる系コメディだったらどうしようと少し心配していたのだが杞憂に終わった。つか感動度は今作が上。近年ピクサーの弱者に寄り添う姿勢がまたアップデートされた一本。
「極度に忘れっぽい」というドリーの特性を、ハンデ(敢えてこういう言い方しますが)で同情を引いたり、克服にドラマを置いたりでもなく、代わりに何か チート的な能力を与えるでもなく、「自分に出来る事で困難を乗り越えていく」という展開に持っていってるのが偉い。劇中の「ドリーならどうする」だ。
そして今回も親と子の話になっていくんだけど、「親は子のためだったらどんな事でもする」というのが前作以上で、前作のマーリンの冒険も相当なものだけ ど、今作のクライマックスでドリーの両親がしてきた事が明らかになるあるショット(そう、説明ではなく映像で見せるのだ)の感動ときたら!
もちろん冒険活劇としても一級品で、広大な海、だと結局どこまで行っても代わり映えしない問題があるし、歯医者の水槽じゃスケール感に乏しい。ってんで今 回用意された舞台が秀逸。視覚的バラエティが豊富で、冒険アクションに様々なバリエーションが付けられ、更に我々にもある程度馴染みが感じられる。
んでそのアクション部分で多大なる貢献をしているのが今作のMVPであろう、新キャラのミズダコのハンク。ニンジャかってくらい変幻自在かつ縦横無尽。何 より地上でも活動出来るってんで今作のアクションに大きな幅を広げている。まさか魚が主人公の映画でカーアクションまであるとは!
吹替版で観たんだけど、ピクサー、ディズニーはタレント吹替でもクオリティに妥協が無いので安心。タコのハンクとかジンベイザメのデスティニーとかエンド ロール見るまで声優だと思ってたもん。あと吹替版最大のインパクトは『八代亜紀』な。「チャッピー」の『テンション』級に持って行かれる。

ロスト・バケーション」。
B級サメ映画全盛の今、メジャーが本気で作ったシリアスなサメ映画。動物パニック映画の再来というよりはソリッドシチュエーションサバイバルの流れで、登場人物と場所を絞って緊張感を持続させる。現代版「ジョーズ」というより、海洋版「127時間」といった趣き。
人が殆ど訪れない穴場のビーチで人喰いサメに遭遇してしまい、海岸から200m沖の岩場に取り残されてしまった医学生サーファーとサメとの2日間に渡るガ チ対決に焦点を絞り、余計なサブプロットを同時進行させないからこそ常に緊張感が持続している。回想すら挟まずカメラは常に戦場を捉えていく。
次から次へと襲いかかる困難に女性主人公が一人で立ち向かっていく、って所から「ゼロ・グラビティ」を引き合いに出す声もあるけどそれも納得。身体がボロ ボロになりながらも医学生という主人公の特性を活かして手持ちの物のみを使って繰り出されるサバイビング・スキルの数々に惚れるぜ。
サメとの駆け引きの緊張感を楽しむ映画なのでサメの人体捕食祭りにはなっていない。まあ勿論人体捕食はガッチリ押さえてあるが直接描写は余りせずインフレ によって安っぽくなる事も避けてある。むしろサメ以外の、海底の岩場に身体を打ち付けられる場面とか、岩場に登る時に足をザリッとかが痛いんだよ。
あとやっぱメジャー映画だけあって、映像が物凄く綺麗。単にサメ映画の中でってだけでなく海洋映画全般でいってもトップクラスの映像美ではなかろうか。海 中から水面の波を捉えた映像とか、あのクラゲの群れの場面の美しさとそれが同時に孕む絶望感とかさ。あと勿論サメ自体も安っぽさ皆無の存在感。

えーっと今月のお絵描き。ラブライブのにことサンシャインのダイヤ。



ラッシャイはキャラ立ちによるコメディが楽しいね。プリキュアで言ったらスマイルプリキュア枠。

さてと新刊は入稿したがやることはまだまだいっぱいあるぞー。


(画・文 P.I.L.)

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