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2016年 5月
5月29日(日)
お知らせ:
仕事が忙しいのでこの絵日記、しばらくの間、実質活動休止とさせていただきます。

ってんで今回も映画日記だけまとめて更新です。
間にゴールデンウィークとかもあったんだからそこで更新とかも出来た筈なのにねぇ。遠出もしてないし。
一度お休みするって決めてしまうとこうも怠惰になってしまうものなのか…。

んでは映画感想のみ。

ボーダーライン」。
メキシコ麻薬戦争をテーマにしたクライムアクション。にしてもこの邦題は上手い。舞台となるアメリカとメキシコの「国境線」は勿論の事、登場人物の内に秘めた善悪の「境界線」を描いているもんな。社会派的なトピックを扱いつつ、個人の内面を抉る人間ドラマにもなっている。
今や米エンタメ界では世界で最も残忍な組織として悪役として人気を博すメキシコ麻薬カルテル。その麻薬カルテルと米国とのガチ喧嘩の最前線を描いているのでそれだけで面白さは保証済みのようなもの。米国側のチームの各組織から猛者集結させました!的感じが恐ろしいやら頼もしいやら。
そんな組織に放り込まれた主人公と同様に、観客もまた次々と起こる「聞いてないよ」な展開の連続に蚊帳の外に取り残されているのを感じながらその組織の得 体の知れなさに翻弄されていって価値観を揺さぶられていく感覚がスリリング。終盤にかけて本当の理由と目的が明かされていくのもサスペンスフル。
とにかく全編を覆うヒリヒリとした緊張感が堪らない。前半のメキシコでの護送任務、いきなり高架下に吊るされた死体がお出迎えとか(実際にある光景らし い)、その後の渋滞した道路上での一般車輌が大勢いる中での今にも銃撃戦が始まりそうな一瞬即発の場面とか。ガンアクションもがっつりだ。
緊張感と同様に全編を支配しているのが不穏感。残虐行為の直接的な描写は実は巧妙に回避されてるんだけど、暴力の匂いは常に充満。大きな水のタンクを持っ て尋問室に入っていく場面だけでその後に壮絶な事が起きる予感をさせたりとか、序盤の壁の中から死体が見つかる場面での、女の死体まである!とか。
そしてこの映画の雰囲気を決定付けてるのがベニチオ・デル・トロの圧倒的な存在感。謎の存在として登場して、最後にこの役所の真の目的が明らかになるんだけど、一度自分の中のボーダーラインを越えてしまった男の矛盾に満ちた禍々しい執念を声や仕草を荒げる事なく体現しててやっぱこの役者凄いわ。
あとやっぱ名手ロジャー・ディーキンスによる撮影が素晴らしい。空撮で撮られたメキシコの荒涼とした風景の異世界感とか、屋上からメキシコの「花火」を見 物する場面の美しさは溜息が漏れる程。ラストにヒロインとベニチオ・デル・トロが対峙する場面の白と黒のコントラストとか演出も込みで画が良い。

ルーム」。
7年間[部屋]に監禁された女性と生まれてから[部屋]から出た事が無い5歳の息子の物語。これ、子供には子供に見えてる「世界」があってその「世界の法則」の中で生きている。って「設定がハードコアな『よつばと!』」って言っていいんじゃないか。鑑賞後の爽やかな余韻も含めて。
最初は部屋の中で仲睦まじく暮らす母子の情景が描かれるのだが、物語が狭い[部屋]から出て行かないことからやがて、この母子の置かれている境遇が明らか になっていくのだが、観客(と母親)はあきらかにそれが異常な状況と認識しても、[部屋]が全世界の子供にとっては異常が認識できない。
この認識のズレが「もどかしさ」を生じ、それが脱出劇に至る過程をとてもサスペンスフルな物にしている。脱出を決意した母親が子供に説明しようとしても、 子供には[部屋]の外に世界があるという事が、いやそれどころか壁の「内」と「外」という概念すら想像だに出来ない物なのだ。
そして手に汗握る展開の末、生まれて初めて[部屋]から外に出た子供が『世界』と対峙した瞬間! この瞬間が、映像的にも音楽的にも演技的にも、本当に素晴らしくて心を揺さぶられる。感動と言うよりも衝撃で涙が出そうになった。こういう興奮の瞬間を味わいたくて俺達は映画を観てるんだよ。
初めて本当の世界と対峙したパラダイムシフトの様子を視覚的にも再現しているのが良い。ずっと狭い部屋の中にいたので屋外での目の焦点の合わせ方が分から ない所とか、母親以外と面した事が無いので他人と接する時の視覚的距離間の掴めなさとか、映像として観客に共有させることに成功している。
で、実は脱出までが物語の半分で、残りの半分は脱出してからの生活が描かれるんだけど、母親には脱出してからの苦悩が、子供には世界に自分を合わせるとい う苦悩(って言い方が正しいか分からないけど)が待ち構えてる。でも子供が世界に自分を合わせるってそれは誰もが体験する「成長」って事だよね。
アカデミー賞主演女優賞を受賞した母親役のブリー・ラーソンは受賞も納得の熱演だけど、子供役の子役の演技が凄いなぁ。世界の成り立ちについてパラダイム シフトを起こすって役柄を人生経験10年にも満たない子供が演じているんだぜ!? 2人の周りの大人達も芸達者揃えてガッチリと脇を固めている。

スポットライト 世紀のスクープ」。
ボストンの地方紙の記者のチームがカトリック教会の組織ぐるみの罪を暴いた実話の映画化。今年のアカデミー賞作品賞受賞作品。なんだけどキモは脚本賞も受賞してるって所で、ストーリー自体がハラハラドキドキ度が高くて娯楽作品としてちゃんと面白い。
ジャーナリスト映画っつーと堅苦しい印象が出るかもしれないけど、陰謀暴き系映画として、暴こうとしていた陰謀が想像を超えてどんどん膨らんでいく様と か、情報を巡っての対内・対外のヒリヒリしたせめぎ合いとか、物語が停滞することなくドライブし続けるので絵面は地味でも興奮しっぱなし。
単にある神父の性的虐待事件を追いかけている筈が、あれ?他にも? あれ?その数が? あれ?背後に? とその罪の全貌がフリーザ様みたいに変形を繰り返 して立ちふさがる際の戦慄がねえ「こいつあと何回変形を残してるんだ?」という絶望感とだからこそ生まれる闘志によってドラマを盛り上げる。
そして記者達の熱意と努力によりネタを掴んでいくんだけど、「いや、ここで記事にするとトカゲの尻尾切りで本丸を逃がしてしまう」という思惑と、「これ以 上温めておくと他のメディアに嗅ぎ付けられて特ダネを逃がしてしまう」という思惑のせめぎ合いもまたドラマを盛り上げるんだよなあ。
そんな紆余曲折を経て、ついにその新聞が出る前日の夜の「数時間後にこの事を世間が知ることとなるが、今はまだ我々しか知らない」って雰囲気の場面から の、新聞が世に出た朝、その反響の足音が聞こえるラストに至る流れで静かな感動が波のようにザザザ…と全身を包み込むのが本当に心地良い。
あとこの映画が良いのは、新聞記者達は確かにヒーローなんだけど、「今までその問題が確かに目の前に横たわっていたのに俺たちにはそれが見えなかった。い や見えないふりをしていた」ってポイントをちゃんと挿入していた事。ここが本当に誠実でこの映画をワンランク上の存在に上げた所だと思う。

ズートピア」。
今やピクサー越えの黄金期を迎えているディズニースタジオの絶好調振りを示す傑作。敷居は低く、間口は広く、懐は深く、志は高く。どんな層にも何のエクスキューズ無くお薦めできるというバケモノみたいな映画。本当「ディズニー恐るべし」としか言いようが無い。
まず「今まで見た事が無い世界に連れて行ってくれる」という映画のダイナミズムに溢れている。サイズや生態系が異なる様々な動物が共存している『ズートピ ア』の都市デザインそのものが見てるだけで楽しくて、冒頭、ズートピアを主人公の乗った列車が走り抜ける場面だけで胸の高鳴りが止まらない。
キャラクターもディズニーらしい動きや表情の豊潤さは当然の前提として、様々な種の動物たちを起用した見た目のバラエティの豊かさは勿論、それぞれに実際 に存在する動物のその種特有の動きなんかを上手くキャラクターに落とし込んだりしていて非常に生き生きしてて端役に至るまで魅力的。
物語自体は正反対のキャラクターの2人が反発や協力を繰り返しながら、足で情報を集めていき一つ一つ手がかりを手繰っていって真相に辿り着く。という正に バディ物の王道といった娯楽路線。男女ペアながら安易に恋愛方向に流されないのも良い(だからこそこっちにも妄想して萌える余地がある!)。
そして差別や偏見といった大きなテーマが扱われているのだが、単に「差別や偏見は悪い人がするものです。やめましょう」なんて薄っぺらい物ではなく、「善 人の中にも差別や偏見の芽は存在する」そして「あなたが差別する側だったらどうする」という領域まで踏み込んでいって、もう平伏すしかない。
とかなんとか大層な事言っても、とにかくギャグは冴えてるし、ゴッドファーザーやブレイキングバッドネタを仕込んでたりするし、あと何よりケモキャラが鬼可愛くてクソエロくて属性が無い人でもケモナーの扉をこじ開けられるので、何も考えず観て、笑って、悶えればいいじゃない!って話でもあるのだ。
あ、書き忘れてた。ズートピアは小道具使いの上手さが神懸っていた。ジュディとニックの関係性の変遷の象徴であるあのニンジン型のペンは勿論の事、何気なく手に取ったアレが実はその後重要な意味を帯びていた、とか唸ったわ。

レヴェナント 蘇えりし者」。
凄まじかった。話自体はこれ以上ない位シンプルな復讐譚ながら、ディカプリオの圧倒的な体当たり演技とエマニュエル・ルベツキの圧倒的な撮影とで観客を揺さぶる狂気に近い迫力があった。物凄く美しいのに残酷なまでの暴力性を内包してるっつーか。
映像の素晴らしさは「タルコフスキーがサバイバルアクションを撮るとこうなる」といった趣き。もう冒頭の川面の画からしてタルコフスキーっぽかったもん な。大自然の中過酷な環境で自然光のみで撮られ、至近距離の人物にも遥か背後の大自然にもピントが合っていてどのコマを切り出してもアートのよう。
そんな中驚愕すべきことに更にカメラがそのアート性を落とすことなく白人と原住民が戦ってる戦場を縦横無尽に動き回ったりするからね。よくこんなの撮れた なって感嘆するレベル。このカメラ自体が映画のもう一人の主役と言ってもいいかもしれないくらいエモーションを決定づけている。
この状況でディカプリオが「ゼロ・グラビティ」の主人公ばりに終始試練に遭い続ける。極寒の川に落ち、雪原を這い回り、生魚を食らい、生肝臓に齧り付く。 もうそこまで体張ったらそりゃアカデミー賞獲らざるを得ないわ。「演技」とか「存在感」とかじゃなくて、「本能」をスクリーンに焼き付けてた。
試練の中で一番インパクトあるのはやっぱだな! 観た人全員が印象に残る、リアルすぎて超怖い熊襲撃シーン。あいつ格闘家じゃなくて動物だから動きが雑なんだよ。ちゃんと組んだりしないんだよ(当たり前だ)。だから前脚がディカプリオの頭を押さえ付けた瞬間とかヒィッ!ってなるんだよ。
思ってたよりアート寄りだったけど、クライマックスで罠師のフィッツジェラルドに罠を仕掛け返したりとか、情けは人の為ならずな決着の付け方とか要所で娯 楽映画のツボを押さえる展開を用意してたりするんで、観念的になり過ぎないギリギリのバランスは保っているように思われました。
あと終盤でディカプリオの背後の山で雪崩が起きてるシーン、CGだと思っていたら爆破を起こして本当に雪崩を発生させてたと知って改めて撮影のガチさに驚く。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」。
単純に世界で一番面白い映画を作る人たちが集まって作った面白い映画。でもいいんだけど、MCUの場合それまでの作品の積み重ねと世界観の広がりが単に1本の映画という枠を超えて、歴史が作られてる過程をリアルタイムで体験してるという興奮がある。
前作ウィンター・ソルジャーはポリティカルスリラーの傑作でもあったけど、今回は心理スリラーで「セブン」なんかを意識してるって監督が発言してて、アメコミ映画でそんなの出来るの?って思ってたけど、終盤に悪役の真の目的が明らかになった瞬間は「セブン」のラスト級に興奮した!
今回もアクションがハンパ無い事になってるんだけど、キャップの場合、身体能力が他に比べて遥かに人間離れしてなかったり、多才なギミックを内包したりし ていないってのがあって肉体格闘アクションとしての快楽性がやっぱ他のヒーローより高いわってのを再確認。ただ今回はそれだけじゃない。
アベンジャーズでは各ヒーローの能力を並べたり繋げたりって方向で進んでいたのを、今回では真正面からぶつけ合うって方向性も加わって、空港での激突の場面では各人の能力をパズルのように組み合わせノンストップで一気に駆け抜ける一大アクションパノラマを完成させていて大興奮!
しかもこの場面が凄いのは単に今まで出してきた手札を組み合わせて「構成が上手い」ってだけじゃなくて、「そんなのありかよ!」ってとんでもない飛び道具 まで仕込んでくる所。スパイダーマンの事でしょ、って思うでしょ。違うんだよ。これはまあ観てくれとしか言いようが無い。
にしても相変わらず各キャラに見せ場をそつなく用意しつつ話が散漫にならず、尚且つ初参戦のブラック・パンサーやスパイダーマンのイントロダクションとし てもよく出来ていて早く単独作観たいと思わせるし、マーベルシネマティックユニバースはリアルタイムで追いかけるの超楽しいぜ!
あと今作は悪役側から見るとスパイスリラー的な楽しみ方も出来るんだよね。にしても今回は悪役の「強さ」にも色々あるってことで強さのインフレでジャンプ漫画的展開に陥るのを上手く回避してるのも上手いなぁと思った。

アイアムアヒーロー」。
事前に海外の映画賞での活躍が喧伝されていて若干ハイプの香りがしていたのだが、これはゾンビ映画として面白くてしかも新しかった。疑っててゴメンなさい!「B級」のエクスキューズ無しで日本でこういうエンタメ映画が作られたのは素直に嬉しいし誇らしい。
ゾンビ映画序盤の醍醐味は日常がどんどん異常事態に侵食されていって崩壊していく様だけど、今作の場合は日常が我々の見慣れた日本の街角の風景なのでより ショック度合いが高い。主人公が街中を逃げる中パニックがパンデミックのように拡大していく様子を長いカットで捉えた序盤の場面はスリリング!
そして新しいのが若干のクリーチャー要素が入ったゾンビ描写。無気力に歩くのにも全速力で走るのにも単純にカテゴライズできないフリーキーさ。原作1巻の ラストを見事に再現した主人公の彼女のゾンビ動きのとか、あとあの高跳びゾンビの異様なカッコ良さ。特殊メイクとCGのブレンド具合も絶品。
ゾンビ映画って「結局一番怖いのは人間」って所に行きがちだけど、今作はあんま人間のヤダみにはクローズアップしてなくて(序盤の塚地のサイコホラーな場 面とか、アウトレットモールでのヒエラルキーとかあるけど)、主人公の内面変化をメインにしているので逆に爽快感すら感じさせる位だ。
クライマックスで主人公が「ヒーロー」となる場面(ゾンビ映画であのピンチの切り抜け方は今まで有りそうで無かったのでは)、「人を救う英雄」というより も「ひたすらゾンビを殺戮する機械」と化すのが痺れる。原作で多用された「はーい」の台詞をここぞのキメだけに使ってるのもいい感じだ。
ってんでグロ描写はあるけど、襲い来る異形ゾンビをひたすら破壊しまくるので逆に気持ち良くなってくるというか。TVの事考えずやりたい放題やってるからな! どっちかと言うとキツいのは序盤の塚地がキレるサイコなシーン位か。でもそこも直接描写は避けてるからな。
にしても主人公を演じる大泉洋、皆が知ってる・期待してる「陽性の大泉洋」を封印して「鈴木英雄」に成り切ってるの凄いな。有村架純も長澤まさみも基本的に配役は皆ハマっててノイズになるような所は無いんじゃないか。片桐仁は本人役と言っていい位だしw

ちはやふる 下の句」。
青春映画の金字塔だった上の句のテンションを落とさぬ仕上がり。上の句では太一と机君にフォーカスを当てていたが今回は千早と新に焦点を当てて、下の句も上の句同様、単品で成り立つ一級の青春娯楽映画に仕上がっていた。上の句が驚きの出来なら下の句は安定の出来。
今回は「何故、かるたをやっているのか」という事を描いてるんだけど、「かるたに魅せられた特殊な青春」という形ではなく、普遍的な「人が何かを好きにな るという事」が描かれていて、長い間あることを好きでいるとつい見失いがちになっちゃう最初の「好き」という気持ちのかけがえの無さを描いてる。
新にその気持ちを思い出させたのと同時に、かるたを始めたきっかけは最初の「好き」であったろうに、孤高の状態に自分を追いやることで強さを維持してきたクイーンに対し「また、かるたしようね」と話しかける千早の圧倒的な主人公力というかにね、やられちゃいますよね。
んでそんな圧倒的な主人公力の原動力でもある広瀬すずの魅力は言わずもがななんですが、下の句はクイーンを演じた松岡茉優の存在感がずば抜けてた。瑞沢か るた部が束になってもびくともしない強靭さを表現しながらそれを逆手にとってしれっとコメディ場面もこなす圧倒的な魅力。ダサい私服もキュート。
熱い展開も盛り込みながら、コメディ演出が寒くなってないのがいいよな。硬軟どちらの場面に対しても、この映画化に関しては実は肉まん君役の子がキーマンなんじゃないかという気がする。様々な場面においてメインの登場人物達の間に入ってケミストリーを引き起こす触媒役と言うか。

映画観た後に
松岡茉優のクイーンをお絵描き。



ヒーローマニア 生活」。
日本では珍しい「アクションコメディ」に正面から挑んだ意欲作。ちゃんと「アクション」してたし、「コメディ」してた。何より主要役者達が普段やらないような役を嬉々としてのびのび演じてる様を見ているだけでこっちも嬉しくなってきちゃうというか。
どんだけ映画出てるんだっていう東出晶大だけど、いつもは「持ってる男」を演じているのに、ぬぼーっとした感じをネガティブに生かして「何も持ってない 男」を説得力持って演じてたのは流石「持ってる俳優」と言うべきか。両手のトンカチを振り回して若者を殴りまくる片岡鶴太郎もキレてる。
一番光ってたのがドラマ版デスノートの月役でもおなじみ窪田正孝。驚異的な身体能力を持つ下着泥棒という役どころでアクションも見せるが、コミュ障演技の ハマりっぷりがハンパじゃなかった。声のトーンが感情の動きとシンクロしながらもその振れ幅が実際の感情に比べて薄い所とか上手い役者だわー。
そして一番の怪演を見せたのが鶴ちゃんじゃなくて(鶴ちゃんは演技自体はシリアスモード)、船越英一郎。竹中直人ばりのやりたい放題を見せる。特にビルの屋上で踊る場面の狂気っぷりがヤバい。音楽がイヤホンから漏れ聞こえてくる物だけというのがヤバさに拍車をかける。
マンガ的にカリカチュアライズされてる部分はあるけど、地方都市にマグマのように堆積する鬱屈を扱ってるという点では「今の日本映画」の雰囲気を纏っているかも。南海キャンディーズしずちゃんが演じる危ないおばさんとか本当に町に居そうなガチのヤバさあるもんな。

ヘイル、シーザー!」。
コーエン兄弟の新作。50年代のハリウッドを舞台に当時の状況を反映させながら、ストレートにタイムレスなコーエン兄弟による映画賛歌になっていた。1本の映画内に様々なジャンル映画を内包してる所も含めてコーエン兄弟版「監督・ばんざい!」とも言えるかも。
シリアスとコミカルを巧みに使い分け、あるいは見事に融合させるコーエン兄弟だけど、今回はコメディ寄りの方。ジョージ・クルーニーの小ボケもあるけど、 特に西部劇俳優と文芸監督との撮影でのやりとり場面が最高。もう会話のテンポや間が完全に漫才! めっちゃ笑ったし劇場内もウケてた。
ジョージ・クルーニーの歴史大作、スカーレット・ヨハンソンの水中レビュー、チャニング・テイタムのミュージカルと、1本の映画の中で様々な黄金期ハリ ウッド映画を堪能できるお得感も有り。特にチャニング・テイタムのミュージカル場面は凄く気合が入っててここだけで映画1本分の満足感がある。
コーエン兄弟作品っぽいって所もちゃんとあって、序盤ジョージ・クルーニーが誘拐された先での「メインキャラと観客には何事か分からないがそこにいる人は 全て分かってる」あの感覚とか、後半の沖合の場面でのそれまでのスケール感が突然狂う「壮大なホラ話」感覚とか、チョイ役の「味のある顔」感も。
豪華キャストの本作、それぞれが良い仕事してるんだけど、やっぱ新鮮で目を惹いたのが、新たなハン・ソロ役にも抜擢されたアルデン・エーレンライク。西部 劇俳優の役だけど、話の中ではかなり大きなおいしい役だったし、前述の映画監督とのやり取りの場面も最高だった。まあ今回は脚本の力もあるが。
そして終盤、ジョシュ・ブローリンがジョージ・クルーニーに対して言う台詞、ラストのジョージ・クルーニーが映画の台詞として言う台詞、こんなにもスト レートに言葉として映画への愛(信仰と言ってもいいかもしれない)を語っているのが、コーエン兄弟の映画への殉教宣言みたいでグッとくる。

HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス」。
前作のスタッフそしてキャストが帰ってきた(鈴木亮平や清水富美加は前作以降凄くメジャーになったのに!)。今回も原作愛に溢れていたが、まさかそれ以上に「スパイダーマン2」愛に溢れている映画だとは思わなかったよw
まるで蜘蛛の糸のように荒縄を繰り出すのは勿論、敵の造形がドクター・オクトパス的だったり、やっぱ主人公のバイトは宅配ピザっしょって感じで冒頭宅配ピ ザのバイトしてたりとか、挙句の果てには「スパイダーマン2」屈指の名場面、電車を止めるシーンの再現をしてたりとかもう無邪気なくらい。
そんな中、あれだけブレイクしたのにストイックに肉体を作ってくる(顔見えないのに!)鈴木亮平の役者魂には頭が下がる。アクションも前回よりパワーアッ プ。真面目な立ち回りを見せつつ全てのムーブに変態的な要素を盛り込んでくるという正に変態仮面でしか出来ない(やる意味が無い)アクション。
前作の壮絶な死からまさかの復帰のムロツヨシは相変わらずの間の会話芝居を見せてくれし、安田顕は今回はゲスト参加的なので前作ほどの破壊力は無いが息を するように変態な存在感を見せてくれる。今回初参戦の柳楽優弥はちょっと大人しめ。まあ、ここもはっちゃけると収拾がつかなくなるからか。
被るパンツに変化を付けて変身後の外見にバリエーションを持たせるとか近年の仮面ライダーっぽいし(そうか?)、ギャグのネタにしたりとかしてたりと、出オチ一発感の主人公造形に飽きさせない工夫をもたらそうという真面目なのか不真面目なのか分からない姿勢もいいね。

映画とは関係無くもう1個お絵描き。服部昇太先生の「日ポン語ラップの美ー子ちゃん」買ったんで(自分はメロンブックスで購入)、美ー子ちゃんをお絵描きしてみたよ。




(画・文 P.I.L.)

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